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すっぽんとは
すっぽんは、中国では古くから漢方薬や食用として重宝されていました。また、日本でも縄文時代の遺跡からすっぽんの骨が発見されたり、文武天皇(飛鳥時代)にすっぽんが献上された文献が残っているとされています。
しかし、すっぽんと聞くと、滋養強壮に男性が摂取するイメージがあり、女性にはあまり馴染みのない食材と思う人も多いそうです。
ところが、すっぽんにはアミノ酸を始めとして、ビタミンやミネラルなどの豊富な栄養成分や、さらに皮にはコラーゲンがたっぷりと含まれているため、女性にとっても嬉しい効果が期待できる食材です。
あの楊貴妃も、美容目的ですっぽんを好んで食べていたと言われています。
すっぽんは亀?
すっぽんは、爬虫綱カメ目スッポン科に分類される亀の一種です。
しかし、亀と大きく違うのは「甲羅」の部分。
亀の甲羅は、骨甲板と角質甲板の二層から出来ているのに対し、すっぽんは骨甲板のみ。骨甲板とは、脊椎に肋骨が癒合して拡張したものと考えられています。亀の場合、この骨甲板の上に、人の爪などに多く含まれるケラチンからなる角質甲板があります。普段、私達の目から見える亀の甲羅は角質甲板の部分で、触ってわかる通りとても硬いのが特徴です。
一方ですっぽんには角質甲板がなく、骨甲板を覆っているのは皮膚になります。そのため、すっぽんの甲羅を触ると柔らかく、ブヨブヨとしています。
すっぽんが高級食材である理由
高級食材として知られるすっぽんですが、実は江戸時代には庶民が気軽に食べられる食材として普及していました。理由は、当時は沼や川などに、天然物のすっぽんが多く生息していたからです。
しかし、すっぽんの人気が高まるにつれて捕獲されるすっぽんの数が増えたことや、すっぽんは食べられるまで大きく成長するには4~5年の年月を必要とすることから、次第に獲れる数が減っていき、それに伴って価格も高騰していきました。
そして、江戸時代末期には庶民が手を出せる値段ではなくなり、以後、高級食材として認識されるようになります。
明治時代に入るとすっぽんの養殖が始まったこともあり、数は少しずつ増えてきましたが、それでもなお今もすっぽんが高級食材であるのは、取り扱いの難しさがあります。
すっぽんは鋭い歯を持っているため、噛み付かれると大けがをする恐れがあります。
また、手早く捌かないと首を甲羅の中に引っ込めてしまい、これを取り出すのは成人男性でも一苦労すると言われています。
このようなことから、現在、すっぽんは家庭料理として定着しておらず、すっぽんを食べる時はすっぽん専門店かすっぽんを取り扱っている料亭などに出向いて頂くのが一般的となっていることも、すっぽんが高級食材とされる大きな理由の一つです。
すっぽんの価格
すっぽんは天然物と養殖物で価格が大きく違い、当然ながら希少価値の高い天然物は養殖物よりも価格が高くなります。とは言え、養殖物だからと言って安価というわけではありません。
大きさによっても価格は変わりますが、すっぽん専門店や料亭では一人前は10,000~15,000円が相場とされています。
ちなみに天然物になると、この2~4倍は値段が高くなると言われています。
ただし、大衆居酒屋などでは比較的リーズナブルな価格ですっぽん料理を提供している場合もあります。
すっぽんの産地
すっぽんは本州南部から四国、九州にかけて幅広く生息しています。天然物はとても数が少ないですが、これらの地域の沼や川では今もすっぽんを獲ることができます。
また、養殖では静岡県の浜名湖がとても有名です。
すっぽんは寒さに弱いため、冬の間は冬眠をするのですが、養殖では水温を上げて冬眠を防ぐため、通常よりも半分程度の期間で食用のすっぽんを育てることができます。
すっぽんの効能や効果
すっぽんには、人が必要とする20種類のアミノ酸のうち、体内では生成することができないため食物などから摂取しなくてはいけない9種類の必須アミノ酸(イソロイシン・ロイシン・リジン・トリプトファン・メチオニン・スレオニン・フェニルアラニン・バリン・ヒスチジン)が全て含まれています。
また、ビタミンAやビタミンB群(ビタミンB1、B2、B6、B12、葉酸)、ビタミンD、ナイアシンなどのビタミン類や、カルシウム、カリウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などのミネラル類、オレイン酸、DHA、EPAといった不飽和脂肪酸、コラーゲンといった栄養成分が豊富に含まれていることから、健康や美容において多くの効能や効果が期待できると言われています。
疲労回復
アミノ酸は、内臓や筋肉、血液などの原料となる成分です。
また、ビタミンB1、B2には糖質や脂質のエネルギー代謝を促す働きがあることから、体の疲れをとり、基礎代謝を上げる効果があると言われています。
生活習慣病の予防や改善
オレイン酸や、DHA、EPAといった不飽和脂肪酸には、血中の悪玉コレステロールや中性脂肪の排出を促す働きがあります。
悪玉コレステロールや中性脂肪が増えると血管内に付着し、やがて血栓を作ります。
血栓は血液の流れを妨げるだけではなく、動脈硬化や高血圧などの生活習慣病の原因となり、放置しておくと脳や心臓に流れ込んだ血栓が詰まって、脳梗塞や心筋梗塞などの重大な病を引き起こしてしまいます。
そのため、不飽和脂肪酸を含むすっぽんは、生活習慣病の予防や改善に役立つと考えられます。
美肌、美髪効果
アミノ酸は皮膚の原料となる成分です。
また、コラーゲンは肌の弾力が潤いを作るためには欠かせない成分ですが、すっぽんにはその両方が豊富に含まれています。
さらに、コラーゲンによって頭皮の健康状態が保たれると、ハリのある美しい髪が育ちやすくなります。
貧血や冷え性の予防や改善
すっぽんには、血液中の赤血球の原料となる鉄を始め、造血作用のあるビタミンB12や葉酸、亜鉛が含まれています。
また、DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸や、アミノ酸のアルギニンには血管を拡張する作用があることから、貧血や冷え性の改善効果が期待できます。
骨粗しょう症の予防
加齢に伴い女性ホルモンの分泌が減ると、骨密度が低下して骨粗しょう症を引き起こしやすくなります。
骨粗しょう症を防ぐには、骨の原料となるカルシウムやカルシウムの吸収を助けるビタミンDを意識して摂取する必要がありますが、すっぽんにはその両方が含まれています。
すっぽんの食べ方
すっぽんは捨てるところがない(※)、と言われるほど、体のあらゆる部分を食べることができます。
すっぽんと言えば鍋や、生き血にアルコールを加えた食前酒が有名ですが、すっぽんを専門に扱うお店では心臓や卵、肝などのお刺身や、肉の部分を唐揚げや塩焼きなどを楽しむことができます。
なお、すっぽん鍋に甲羅をそのまま入れるのは、削ぎ落ししきれないコラーゲンが甲羅にくっついているからです。甲羅ごと鍋で煮込むことでコラーゲンが染み出し、トロトロとした汁になります。
鍋の〆には、旨味が存分に溶け出た汁にご飯、溶き卵、海苔、ネギを入れて雑炊にするのが定番です。
(※)実際には、胆嚢、膀胱、爪、甲羅は食べることができません。
食事以外で取り入れる方法
すっぽんが健康や美容によいということがわかっても、値段が高い、すっぽんを取り扱っているお店が少ないなどの理由で、毎日気軽に摂取することができません。
そのような場合は、サプリメントの利用がお勧めです。
ただし、サプリメントと一口に言っても、販売しているメーカーによって使用しているすっぽんの種類や部位などが異なります。
安心・安全を得るなら、やはり日本の天然物のすっぽんを、国内メーカーで製造しているものがよいです。
なお、サプリメントの中には、原材料の産地や製造過程などが不明瞭なものがありますが、体内に入れるものですのでそのような商品はできるだけ避けてください。