プラセンタの効果や種類

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プラセンタとは

プラセンタ(placenta)は胎盤という意味のため、本来は胎盤そのものを指す言葉ですが、美容におけるプラセンタは必ずしも胎盤に限定されず、胎盤から直接抽出した有効成分や、胎盤に近い働きをするものから抽出される成分を包括してプラセンタと呼んでいます。

まずは胎盤の働きに着目!

胎盤は元々体に備わっているものではなく、妊娠した際に新しく作られる臓器です。

胎盤は、哺乳類の中でも有胎盤類に属するものと、一部の魚類のメスの子宮内に形成される器官※であり、人の胎盤は子宮の内壁に円盤状に作られます。人の場合、臍の緒を通して母体から胎児へと栄養や酸素などが運ばれ、逆に胎児からは二酸化炭素や老廃物が母体へと送られます。
※哺乳類の中でも単孔類であるカモノハシは、哺乳類ながらに卵を産むため胎盤がありません。

また、カンガルーやコアラ、ウォンバッドなどの有袋類も、胎児を育てる胎盤を作らないことで知られています。

その一方、哺乳類ではないサメの一種には、胎盤を持つものも存在します。

“成長因子”がプラセンタ人気の鍵

受精卵が受精した時は一つの卵子と一つの精子が結合しただけですが、その後、もの凄いスピードで細胞分裂を繰り返し、赤ちゃんとしてこの世に誕生する時には約3兆個の細胞によって形成されていると言われています。

このような驚異的な成長を遂げられるのは、胎盤から栄養や酸素が送られる他に、細胞の成長を促す成長因子(グロースファクター)が供給されているからです。

成長因子は、近年の研究によって胎児を大きく育てるだけではなく、傷ついた細胞の修復や新しい細胞を作り出す働きがあることがわかっています。

そのため、プラセンタは美容や健康においてもその効果を発揮するとして、注目を集めるようになりました。

プラセンタの定義

プラセンタの意味は胎盤なので、本来であればプラセンタ製品はプラセンタから抽出された成分を使用したもの、という解釈を持つのが一般です。

しかし冒頭でも述べた通り、プラセンタ製品の中には胎盤から抽出されたもの以外を使っている場合があります。

その理由は、胎盤がない植物や魚類にも胎盤に似た器官があり、多くの栄養成分が含まれているからです。

このようなことから、プラセンタ関連製品には全てに胎盤に含まれる成分が使われているわけではありません。

プラセンタの効果

プラセンタは紀元前からその薬効が知られており、クレオパトラやマリーアントワネット若返りのためにプラセンタを摂取していたと言われています。また、クレオパトラに並ぶ世界三大美女の一人である楊貴妃も、プラセンタを摂取していたことが記述として残っています。

楊貴妃は中国人ですが、中国ではプラセンタを「紫可車(しかしゃ)」と呼んで漢方として処方していました。

なお、上記の3人に限らず、多くの歴史上の人物がプラセンタを愛用してきましたが、女性の場合、多くは美容目的であったと言われています。

その理由は、プラセンタの持つ次の4つの効果だと言われています。

抗酸化作用

活性酸素が体内で増えると、細胞を傷つけて酸化させ、正常な働きを阻害してしまいます。

酸化とは簡単に説明すると、酸素に触れて鉄が錆びた状態が自分の体内で起こっていると想像してみて下さい。

このような細胞の酸化は、老化の進行を早め、病気の発症原因となってしまいます。

年齢が若い時は活性酸素を除去する力が備わっていますが、加齢とともにその働きが衰えてしまうことから、酸化を阻止する抗酸化力の高い成分を摂取することが大切になりますが、プラセンタには抗酸化力の高い成分が数多く含まれています。

血行促進作用

血液の流れが悪くなると、細胞に必要な栄養や酸素が十分に届けられなくなり、老廃物の排出が滞って細胞が衰える原因となってしまいますが、プラセンタには血行を促す成分が含まれているため、血液の流れを促進する効果があると言われています。

抗炎症作用

抗炎症作用とは、紫外線などの刺激によって発生した炎症を抑え、壊れた皮膚組織を修復する働きを指します。

このようなことから、プラセンタにはニキビなどのトラブルから肌を守る働きがあると言われています。

ホルモンバランス調整作用

プラセンタにはホルモンバランスを整える働きがあると言われており、加齢やストレスなどが原因で乱れたホルモンバランスを調整することで、生理不順や肌荒れ、更年期障害などを改善する効果があると言われています。

プラセンタの種類

プラセンタは、成分が抽出される原料によって、大きく次の3種類に分けることができます。

  • 動物性プラセンタ
  • 植物性プラセンタ
  • 海洋性プラセンタ

種類ごとの詳しい内容は後述していますが、動物性プラセンタは主に美容医療やサプリメント、健康食品に使用されています。

対して、植物性プラセンタや海洋性プラセンタは、化粧品などのコスメに使われています。

プラセンタの主な成分

プラセンタ製品は、プラセンタそのものを使っているのではなく、そこから抽出される成分(プラセンタエキス)を使用しています。

では、プラセンタエキスには、一体どのような成分が含まれているのでしょうか。

アミノ酸

アミノ酸は皮膚や臓器、筋肉、髪、爪など体のあらゆる部分を作るために欠かせない成分です。

また、アミノ酸が多数結合してできるのがたんぱく質なので、プラセンタエキスにはたんぱく質も多く含まれています。

成長因子

細胞の分裂や増殖を活性化させる働きがあり、たんぱく質の一種とされています。

成長因子には、EGF(上皮細胞増殖因子)、NGF(神経細胞成長因子)、FGF(線維芽細胞増殖因子)、IGF(インシュリン様成長因子)などの種類がありますが、特に美容面において重要な役割を持っているのはEGFとFGFです。

ビタミン

ビタミンは抗酸化作用が期待できる他、皮膚のハリやキメの素となるコラーゲンの生成に関わっているため、主に美肌作りのために欠かせない成分と言えます。

ミネラル

五大栄養素の一つに数えられ、細胞の働きを促し、神経の伝達に関わるなど、体の機能において重要な役割を担っています。また、ミネラルには肌のターンオーバーを促す働きもあり、ビタミンと同様に美肌作りには欠かせない成分となっています。

脂質、脂肪酸

脂質や脂肪酸は、細胞を覆う細胞膜やホルモンの原料となる成分です。また、ビタミンの吸収を助ける働きも担っています。

糖質

体を動かすためのエネルギー源となり、特に脳においては唯一のエネルギーとなることから、健全な心身を維持するために欠かせない成分と言えます。

核酸

核酸とは、DNA(デオキシリボ核酸)とRNA(リボ核酸)の総称を言い、細胞が新しく生まれ変わる際に必要な成分です。

主に傷ついた遺伝子を修復するために使われ、体内でも肝臓で生成されますが、40代以降になると大幅に減少するため老化が進行しやすくなるため、食物などから意識的に摂取する必要があると言われています。

酵素

体内で働く酵素には消化酵素と代謝酵素がありますが、加齢とともに酵素の生成量が減ると、食物を消化する力が衰えて栄養が不十分になったり、内臓や筋肉の働きが弱くなって免疫力や体力の低下を招きやすくなります。

動物性プラセンタの種類と特徴

動物性プラセンタの原料は哺乳類の胎盤になりますが、哺乳類ならどの種類でもプラセンタ製品が作られているというわけではなく、現在のところ原料として使用されている動物は限られています。

そこでここでは、動物の種類別のプラセンタの特徴をご紹介します。

人(由来)プラセンタ

正常分娩かつ健康なヒトの胎盤から抽出された成分を使用したもので、国内では医療機関のみでの使用が許可されています。

特定の疾患(更年期障害や乳汁分泌不全など)では保険適用で治療を受けることができますが、美容目的の場合は保険適用になりません。

人由来プラセンタは、アミノ酸などの栄養成分だけではなく、成長因子の効果も期待ができ、さらに経口摂取よりも体内吸収がよい注射によって得ることができます。(経口摂取の人由来プラセンタもあります)

そのため、現時点ではプラセンタの効果を最も得られる方法と言えます。

なお、人由来プラセンタの治療を受けた人は、以後献血をすることができません。これは、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病への感染が懸念されるからです。

変異型クロイツフェルト・ヤコブ病は、2000年初頭に狂牛病(BSE)の発症によって注目されるようになった病気で、変性たんぱく質(プリオン)が脳に蓄積することで起こる伝達性海綿状脳症です。

胎盤も脳と同様にたんぱく質が集まっているため、リスクが0ではないことから、人由来プラセンタの治療を受けると献血を受けることはできなくなってしまいますが、今現在、人由来プラセンタが原因で変異型クロイツフェルト・ヤコブ病を発症した人はいません。

なお、牛プラセンタが販売されていない理由も、この病気を発症する恐れがあるからです。

馬プラセンタ

馬プラセンタは、サプリメントや健康食品、化粧品などに使用ができます。

馬は他の動物のように多頭出産ではなく、一年に一頭しか産まないため、胎盤に厚みがある分有効成分が豊富に含まれていることから、動物性プラセンタの中では高価で高品質であると言われています(人由来プラセンタを除く)。

特に国産のサラブレッドが原料となるプラセンタは、生育状況や管理が徹底されているため、病気や寄生虫の心配がなく安心と言われ、馬プラセンタの最高級品と称されます。

馬プラセンタはアミノ酸の含有量が多く、ヒアルロン酸やビタミンと言った美肌作りに必要な成分も多く含まれているのが特徴となっています。

羊プラセンタ

羊プラセンタは、人の肌との親和性が高く、プラセンタを摂取した際に起こる湿疹やかゆみなどが起こりにくいと言われています。

しかし、日本では現在、羊プラセンタを原料とした製品の製造は禁止されています。これは、反芻動物である羊は、牛と同様に伝達性海綿状脳症を発症する恐れがあるからです。

日本国内で流通している食肉に関しては、危険部位を取り除いているため問題はありませんが、胎盤を原料に使った製品は使用することができません。

ただし、ニュージーランドやオーストラリアなどでは羊プラセンタの製造や販売が行われていることから、これらを個人輸入して摂取することは可能となっています。

リスクを知った上で羊プラセンタを選ぶ自由はありますが、プラセンタを販売している業者の中には羊プラセンタであることを記載せずに、安価のプラセンタとして販売しているケースもあるため注意が必要です。

豚プラセンタ

豚は年に2回出産し、一度に10頭ほど子どもを産むため、動物性プラセンタの中では最も多くのプラセンタエキスを抽出することができます。

そのため、希少価値の高い馬プラセンタや日本では購入が難しい羊プラセンタに比べ、はるかに流通量が多く、動物性プラセンタの主流となっていると言ってよいでしょう。

なお、豚プラセンタと一口に言っても、原料となる豚の管理や飼育状態によって安全性などが異なります。

より安心した豚プラセンタを摂りたいという場合は、国産SPF豚が原料となっているものを選ぶのがよいとされています。

植物性プラセンタの特徴

植物性プラセンタは、胎盤から抽出される成分を使用したものではなく、胎盤に似た働きをする胎座から成分を抽出したものになるため、胎盤に含まれている成長因子が含まれておらず、動物性プラセンタと同様の効果を期待することはできません。

さらに、胎座の部分はとても小さいため、製品として販売するには多くの植物を採取してエキスを集める必要があるので、その分コストが掛かってしまい、価格が高くなってしまいます。

そのため、植物性プラセンタには胎座以外から抽出される成分も含まれている場合が多くあり、これをプラセンタと呼んでよいのかという疑問が残ります。

とは言え、植物にはフラボノイドやテルペノイドと言った美容に有効な成分が含まれているので、美容効果が全く期待できないというわけではありません。

植物性プラセンタが含まれる製品は、主に化粧水や美容液、シートマスクなどに使用されているので、プラセンタ本来の効果はなくても、他の美容成分によって顔のハリやキメを整えたいと言ったピンポイントでの使用に向いていると言えます。

海洋性プラセンタの特徴

海洋性プラセンタは、哺乳類に属するクジラやイルカ、または魚類でありながら胎盤を有するサメの一部の種類から成るプラセンタではありません。

これらの動物は養殖や捕獲が難しいことから、製品化しにくいというデメリットがあるため、クジラプラセンタやイルカプラセンタは存在しません。

では、海洋性プラセンタとはどのようなものを言うのでしょうか。海洋性プラセンタと名が付く製品には、魚卵を包み込んでいる卵巣膜を使用しています。

卵巣膜には植物性プラセンタと同様に成長因子は含まれていませんが、卵を育てるためのコラーゲンやエラスチン、アミノ酸、ヒアルロン酸などの成分が含まれており、特にコラーゲンは動物性プラセンタよりも多く含まれています。

プラセンタを利用する際の注意

プラセンタの効果について、現時点で科学的な根拠が示されているのは医療用として認可されている人由来プラセンタのみとなります。

つまり、サプリメントや健康食品に使用されている馬プラセンタや豚プラセンタなどは、その効果について立証されているわけではなく、効果そのものを謳ってはいけないことになっています。

また、サプリメントや健康食品は食品のため、医薬品のような副作用はないとされていますが、摂取した方の中には発疹や浮腫、微熱などのアレルギー症状が現れた事例もあります。

使用中にこのような症状が現れた時は、速やかに使用を中止し、医師に相談するようにして下さい。

なお、プラセンタと言っても、実際には胎盤に由来する成分が含まれていない(もしくは含まれていてもごく少量)の製品も存在します。

植物性プラセンタや海洋性プラセンタには、そもそもプラセンタ摂取の要とも言える成長因子が含まれていないのですから、ヒアルロン酸やビタミンと言った成分を摂りたいのではあれば、何もプラセンタをわざわざ選んで摂る必要はないという話になります。

サプリメントや健康商品、化粧品などを購入する場合には、このような事実を踏まえた上でキャッチコピーに誤魔化されないことが大切になります。

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