読み方・表示名 | ナイシン |
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使用用途 | 保存料…食品の細菌による腐敗を防ぎ、保存性を高める。 |
使われている主な食品 | ハム・ソーセージ・チーズ・ホイップクリーム・ドレッシング・ミソなど |
使われている主な製品 | 明治「 北海道十勝チェダーチーズソース 」 テーブルマーク「 とろーり焼きカレーパン 」 松坂ハム「 健味鶏の生ハム風タタキ 」 |
毒性 | 安全性が十分確認されていない |
「 抗菌物質 」~ ナイシン
「 主たる抗菌性成分は、発酵乳から分離されたラクトコッカス・ラクティスが作る34個のアミノ酸 」
厚生労働省の資料を読んで~ なんだ、ヨーグルトから作られるのかぁ。安心、安心
「 JECFA( FAO/WHO合同食品添加物専門家会議 )では、1968年にADI( 一日摂取許容量 )が定められている( 0.13mg/kg? 体重 / 日 )」~ あれ? 許容量? 摂り過ぎは危険なの?
日本は遥か昔から乳酸菌の恩恵にあずかってきました。味噌や醤油、漬物、近代社会ではチーズ、ヨーグルト、キムチ。塩麹なども話題にのぼります。
乳酸発酵を行うことで、風味も良くなると共に保存性が高まります。乳酸菌は糖分を分解して、乳酸と二酸化炭素を発生させます。乳酸の働きで腐敗菌の発生をおさえ、食品の美味しさを長持ちさせてくれるのです。
味噌やぬか漬けなどを各家庭で作っていた時代は、自然発生する乳酸菌の保存性だけで十分食べていくことができました。
しかし、食品加工会社が製品を作り、流通させ、販売するとなると、より日持ちを良くしなければなりません。
そこで、登場したのが保存料なわけですが…
ナイシンは他の食品添加物( 着色料や人工甘味料 )のように明らかな毒性が証明されてはいません。
ナイシンの添加物利用に反対する団体は、懸念要素としてそれ自体の毒性ではなく、乳酸菌が作り出す「 抗生物質 」だと主張します。
ナイシンには強い抗菌作用があるのです。
風邪をひいたり、喉が痛かったりすると、病院から抗生物質が処方されることがあります。
この時よく薬剤師さんから「 途中で止めずに、最後まで飲みきってくださいね 」と言われます。
これは、症状が軽くなったからといって、処方された適量の抗生物質を途中でやめてしまうと、体内に残ったわずかな菌が、さらに強くなって、同じ薬が効かなくなるという「 耐性菌 」ができてしまうからです。
薬としての「 抗生物質 」とナイシンの持つ「 抗菌物質 」が同じ作用するかはわかっていませんが( ナイシンは少量で高い抗菌性を発揮し、耐性菌は発生しにくい ← 厚生労働省の主張 )、懸念材料になりうるということです。
海外でのナイシンの利用はチーズ・乳製品・缶詰に限られています。
それに対し、日本で当初予定された使用可能な食品は、乳製品( アイスクリーム、飲料、ホイップクリーム、チーズ )生菓子・フラワーペースト・洋菓子・食肉加工品( ハム、ソーセージ )たれ、麹、大豆製品( 豆腐、味噌 )、魚介乾製品・魚卵(いくら、すじこ、たらこ、明太子)に至るまで、多岐にわたっていました。
ナイシン利用反対派は、このようにナイシンという抗菌剤を乱用しては耐性菌が拡大して医療現場での混乱を招くと主張しました。
そして、新たに使用基準が検討され、現在は「 穀類、デンプンを使用する洋生菓子・ソース類・卵加工品・チーズ・ドレッシング・食肉製品・ホイップクリーム・味噌・洋菓子 」に限定されています。
ナイシンが食品添加物に指定されたのはごく最近です。( 2009年3月 )
これには、貿易自由化の促進、さらにはTPP参加をにらんで、外国からのナイシンを添加した乳製品等の輸入を円滑に進めるための、政治的判断だったのではないかとの疑問も残ります。
これまでも、十分すぎる種類の食品添加物を使用しているのに、さらに新たなものが本当に必要なのかとも思いますが、このナイシンに最近新たな効果が期待されています。
がん細胞を抑制
ナイシンをがん細胞に加えると、特殊なタンパク質が増加します。そして、細胞内のカルシウムの流入が増えて細胞死に誘導されます。
健康な細胞ではなくがん細胞を選んで働くのは、細胞ががん化したことによって細胞膜が変化して、ナイシンが作用しやすくなるためだと考えられています。
ナイシンはすでに食品添加物として認可されている物質なため、人への応用を含めた研究がし易いとされ、新たな抗がん剤への期待が高まります。