ナットウキナーゼとは
ナットウキナーゼは、その名が示す通り、納豆に含まれる特有の成分です。
健康情報にあまり詳しくないと言う人でも、納豆のネバネバが体に良いと言うことは聞いたことがあると思いますが、そのネバネバに含まれているのがナットウキナーゼです。
納豆は、煮大豆に納豆菌を振りかけ発酵させて作る食品ですが、製造過程において納豆菌が生成する成分の一つがナットウキナーゼになります。
ナットウキナーゼは、たんぱく質分解酵素の一種です。
たんぱく質分解酵素の働き
たんぱく質は、髪や皮膚、筋肉、臓器、ホルモンなどの原料となり、体を構成するには欠かせない成分です。
だからと言ってたんぱく質を摂ってさえいれば良いと言うわけではありません。なぜなら、たんぱく質のままでは、分子が大きすぎるため体内で吸収されないからです。
そこで、摂取したたんぱく質は、たんぱく質の構成成分であるアミノ酸にまで分解する必要があるのですが、その際に働くのがたんぱく質分解酵素です。
体内で分泌されるたんぱく質分解酵素には、
- 胃液に含まれるペプシン
- 膵臓で作られて小腸で働くトリプシン
などがあります。
たんぱく質分解酵素は食物にも含まれており、ナットウキナーゼの他にも
- パイナップルに含まれるブロメライン
- キウイに含まれるアクチニジン
などがあります。
酢豚にパイナップルが入っているのをよく見かけますが、これはブロメラインの働きによって肉に含まれているたんぱく質を分解し、柔らかくするためです。
ナットウキナーゼと他のたんぱく質分解酵素との違い
体内で合成されるたんぱく質のうち、血管壁の損傷などによって出血が起きた場合に、血小板とともに血餅(赤血球や白血球、繊維素から成る塊)を作り、傷を修復する働きのあるものをフィブリンと言います。
フィブリンは「血栓」とも呼ばれており、通常は役目を終えるとウロキナーゼと言う酵素によって分解(溶解)されるのですが、加齢やストレスなどでウロキナーゼの働きが衰えると、血管内に血栓が残りやすくなってしまいます。
ナットウキナーゼは、他のたんぱく質分解酵素と比べて、血栓を分解する働きに特化していることがわかっています。
また、ナットウキナーゼには、血栓を直接分解する働きがあるだけではなく、血栓分解酵素のウロキナーゼの前駆体(その物質が生成する前の段階にある物質のこと)であるプロウロキナーゼを活性化する作用や、血栓分解酵素のプラスミンを作り出すt-pa(プラスミノーゲンアクチベーター)を増やす作用があります。
さらに近年の研究では、ナットウキナーゼには血栓の溶解を阻害する作用を持つPAI-1を不活性化することもわかってきています。
ナットウキナーゼの効果
血栓分解作用に優れたナットウキナーゼには、どのような効果が期待できるのでしょうか。
心筋梗塞や脳梗塞の予防
血栓が分解されないままでいると、血液の流れを低下させて高血圧などの原因となります。
また、血栓が多くできるというのは、それだけ血管壁が脆くなって修復が繰り返されていること。この状態が続くと、血管壁にドロドロとした塊ができてしまい、そこにカルシウムが付着して石灰化して動脈硬化を進行させてしまうことにもなります。
さらに恐ろしいのは、血栓が血流に乗って細い血管へと侵入した場合、血管内で詰まって血液の流れを止めてしまうケースです。
心臓の血管で詰まれば心筋梗塞、脳の血管で詰まれば脳梗塞を起こしかねなく、これらは発症すると即、命にかかわることになります。
アルツハイマー型認知症の予防
ナットウキナーゼには、アミロイドβというたんぱく質の分解作用があることも、研究でわかってきました。
アミロイドβは、アルツハイマー型認知症の原因として有力視されている物質のため、ナットウキナーゼの分解作用によって、病気の予防に役立つと考えられています。(ただし、アルツハイマー型認知症の原因については今現在まではっきりと解明されていません)
目の疲れや視力の回復
血栓を取り除き血流が改善することによって、目のかすみや疲れが解消すると言われています。
また、目の中にできる変性たんぱく質をナットウキナーゼが分解し、視力が回復したという例もあります。
ナットウキナーゼの摂取がお勧めの人
PAI-1は、内臓脂肪やコレステロールの蓄積、血糖値が高い、高脂血症と言った症状によって増えるため、肥満傾向にある人は血栓ができやすいと言われています。
メタボリックシンドロームなどの生活習慣病が気になる方は、血栓の予防や改善にナットウキナーゼの摂取を試してみるのがよいです。
また、認知症の予防や、デスクワークでパソコンをよく使う人やスマホの使用時間が長い人なども、ナットウキナーゼで目の疲労回復に努めてみることがお勧めです。
ナットウキナーゼの摂取方法
ナットウキナーゼは納豆特有の成分なので、摂取するには納豆を食べるのが最も簡単です。
毎日納豆を食べるという人も多いと思いますが、それは朝食でしょうか?もし朝食だとしたら、夕食に変えてみて下さい。なぜなら、一日の中で血栓ができやすいのは寝ている時だからです。
納豆に含まれているナットウキナーゼは、摂取後4時間経過後に効果が表れ始め、その後8時間ほどは持続すると言われています。
つまり、夕食に納豆を食べると、血栓が最もできやすい睡眠時にナットウキナーゼが活性化されるので、血栓の分解が効率よく行われます。
また、ナットウキナーゼは熱に弱い性質があるので、炊き立てのご飯の上に納豆をのせてしまうと、効果が薄くなってしまう恐れがあります。
ナットウキナーゼを摂る時は、冷ましたご飯と一緒に食べるのがよいです。同様に、納豆チャーハンや味噌汁の具として煮込んで食べるなどもNGです。
納豆の摂取には注意も必要
納豆には、ナットウキナーゼ以外にも多くの成分が含まれています。
大豆イソフラボンはその一つですが、大豆イソフラボンは適量の摂取であれば、女性ホルモンのエストロゲンに似た働きをしてくれるので、女性の味方になるのですが、過剰摂取すると生理不順などの原因になると言われています。
一日の大豆イソフラボンの摂取上限は70㎎となっていますが、納豆1パックでおよそ37㎎の大豆イソフラボンが含まれています。
一見すると「それなら2パックまで食べてよい」と考えがちですが、大豆イソフラボンは大豆製品すべてに含まれているので、味噌汁や豆乳、おからなどを合わせて摂るとすぐに上限量を超えてしまいます。
そのため、納豆を食べるなら一日1パックに留めておくのが無難です。
そしてもう一つ、納豆にはビタミンKも含まれています。ビタミンKは、血液の凝固を促す成分が生成される際に補酵素として働いています。つまり、納豆には血液をサラサラにするナットウキナーゼと、血液を固めるのを助けるビタミンKの両方が含まれているというわけです。
ビタミンKは、心筋梗塞などの治療薬に使われるワーファリンを服用している方は、摂取してはいけない成分となっているので、持病のある場合は安易に摂取しないようにしましょう。
サプリメントを利用する
持病のある人や、納豆の味や香りが苦手だけど、ナットウキナーゼを摂取したいという場合は、サプリメントを利用するのがよいです。
近年は、外国人観光客に和食が人気となっていますが、納豆だけはどうしても食べられないという方も多いと聞きます。
しかし、ナットウキナーゼが体によいという情報は世界でもよく知られているので、サプリメントがお土産で人気となっているようです。
なお、サプリメントを選ぶ時は、ビタミンKが除外されている製品の方がより血液サラサラ効果を得ることができます。
また、納豆特有の匂いが少ないなどの口コミを確認するようにしましょう。