ダイエット中にこそ摂りたい脂質

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脂質とは

脂質は、炭素、水素、窒素で構成されており、炭水化物(糖質)、たんぱく質と並ぶ三大栄養素の一つです。

体にとって重要な役割を担う成分ですが、一方で脂質の摂り過ぎは健康を害し、肥満を増長させるものとして認識されており、特にダイエット中は脂質を極力避けた食事を行う人iも多いのではないでしょうか。

「脂質は摂取する必要がない」など大きく誤解されている部分もあり、誤った摂取制限を行っている人も少なくありません。

脂質の種類

一口に脂質と言っても、その種類は様々です。

脂質は構成される成分や構造によって、単純脂質、複合脂質、誘導脂質に分かれますが、食品に多く含まれているのは単純脂質です。

単純脂質はグリセリン(脂肪や油脂を加水分解して得られる液体。医薬品や化粧品、食品添加物などに用いられる)と脂肪酸(モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド)がそれぞれ結びついたもので、これらを総称して中性脂肪と呼んでいます。

また、脂質の主な成分となる脂肪酸も、大きく分けて次の2つに分類されます。

飽和脂肪酸

飽和脂肪酸は、酸化されにくく、常温でも固体のものが多いと言われています。

飽和脂肪酸は、2つの原子にて2対の電子対を共有する二重結合がありません。

牛や豚、鶏などの脂を始め、バター、ラード、生クリーム、乳製品などの動物性の油脂に多く含まれています。

不飽和脂肪酸

不飽和脂肪酸は、魚の油や植物油に多く含まれるもので、酸化されやすく、常温だと液体のものが多いと言われています。

二重結合がない飽和脂肪酸に対し、二重結合が1つのものを一価不飽和脂肪酸、2つ以上のものを多価不飽和脂肪酸と言います。

不飽和脂肪酸にはこの他に、植物油に水素を添加して人工的に製造されるトランス脂肪酸もあります。

トランス脂肪酸はマーガリンやショートニングなどに多く含まれますが、アメリカでは健康被害への懸念から、2018年6月以降の食品への使用が禁止されています。

必須脂肪酸と非必須脂肪酸

脂肪酸のうち、体内で生成が可能なものを非必須脂肪酸、体内で生成できないため食品などから意識的に摂取する必要があるものを必須脂肪酸と呼んでいます。

非必須脂肪酸に含まれるのは、飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸です。

また、必須脂肪酸には多価不飽和脂肪酸が含まれ、さらにn-3系とn-6系に分かれています。

コレステロールも脂質の一種

健康診断などで、その値に一喜一憂することも多いコレステロール。

何となく体にとってはよくないイメージを持っていると思いますが、実はコレステロールも脂質の一種です。

コレステロールは体内に元から存在する成分ですが、脂質のためそのままでは血液中に溶け込むことができないので、たんぱく質と結合してリポたんぱく質という成分に変わることで液体である血液中に存在しています。

たんぱく質と結合したコレステロールは重さによって5種類に分かれ、一番比重の重いものをHDLコレステロール、HDLコレステロールの次に比重が重いものをLDLコレステロールと呼びます。

脂質の働き

血液中を流れる脂質には、中性脂肪、リン脂質、コレステロール、遊離脂肪酸の4種類があり、これらを「血清脂質」と呼んでいます。

中性脂肪やコレステロールについては聞き馴染みがあると思いますが、リン脂質、遊離脂肪酸はあまり聞いたことがない方も多いかも知れません。

リン脂質は複合脂質の一つで、細胞を覆う細胞膜の主な構成成分です。

また、水と油を結びつける性質を持っており(両親媒性と言います)、単体では血液内を流れることができない脂肪を、たんぱく質と結びつけたり、脂肪をエネルギーに変える役割を行っています。

さらに、脂溶性ビタミン(A,D,E,K)の体内吸収を助ける働きもあります。

遊離脂肪酸は、血液中で中性脂肪が分解されたもので、エネルギーとして利用されますが、利用されなかった分は肝臓にて再合成され、再び血液中を流れます。

中性脂肪とコレステロールに対する誤解

中性脂肪には、糖質だけでは補えないエネルギーを供給するという働きがあります。

特に運動強度の高いスポーツを行っている時はエネルギーが不足しやすいため、中性脂肪をエネルギーに変えて利用しています。

また、中性脂肪は皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられることで、外気温による体温の変化や外部からの衝撃に対し体を守る役割を担っています。

一方のコレステロールには、リン脂質と同じく細胞膜の構成成分となるという大きな働きがあります。

この他にも、副腎皮質ホルモンや胆汁酸の材料となるため、人が生きていくためには欠かせない成分と言えます。

脂質が病気や肥満を招く理由

脂質は、肝臓で生成されるものと食事によって必要量は十分に補えるため、不足することはほとんどないと言われています。

また、脂質には1gあたり9㎉のカロリーがあり、1gあたり4㎉の糖質やたんぱく質に比べてエネルギー効率が高くなる反面、体内では糖質が先に使われるため、脂質は糖質が不足するまで出番がなく、その間にどんどん脂肪として蓄えられてしまいます。

現代は飽食の時代と言われており、中でも糖質や脂質の多い食事が増えています。

中性脂肪やコレステロールは体にとって必要な成分ですが、増えすぎてしまうと血管壁に付着するなどして血液の流れを滞らせ、様々な問題を引き起こしてしまいます。

血液がドロドロになると、心臓は血液を流すために血液量を増やしますが、その際血管に高い圧力がかかるため高血圧になりやすくなります。

高血圧が恐ろしいのは、それ自体には自覚症状がないこと。

そのため、高血圧はサイレントキラー(沈黙の殺人者)とも呼ばれています。

高血圧によって長い間高い圧力をかけ続けられた血管壁は疲弊し、やがて動脈硬化から心筋梗塞や脳梗塞と言った重篤な症状を引き起こす恐れがあるのです。

なお、中性脂肪には、LDLコレステロールを増やし、HDLコレステロールを減らす働きがあると言われています。

LDLコレステロールは、血液内にコレステロールを排出する作用があり、血液の流れを妨げたり血栓を作りやすくすることから、悪玉コレステロールとも呼ばれています。

一方のHDLコレステロールは、血液中のコレステロールを吸収する働きがあることから、善玉コレステロールと呼ばれています。

健康診断などで中性脂肪の値が高い人は、必然的にLDLコレステロールの値も高いと言えます。

LDLコレステロールを減らすには、中性脂肪を減らすことが大切です。

中性脂肪を減らすためには

中性脂肪は食品に多く含まれているため、中性脂肪を減らすには普段の食事を見直すことが大切です。

特にベーコンやハム、チーズなどの動物性脂質や、フライドポテト、から揚げ、天ぷらなどの揚げ物、ポテトチップスなどもスナック菓子は製造過程に油を大量に使っているため脂質が多く含まれており、食べ過ぎは脂質の摂り過ぎに直結してしまいます。

なお、砂糖を使ったお菓子や、ケーキ、アイスクリームなどの甘い食べ物、ご飯やパンなどの主食には糖質が多く含まれるため、一見すると脂質とは何の関係もなさそうに思えますが、糖分は体内でインスリンの働きにより中性脂肪に変換されます。

「甘いものを食べると太る」と言われているのはこのためです。

肉類などを食べなくても毎日お菓子を食べていると、中性脂肪が溜まってしまうので注意しましょう。

脂質不足が招く症状

過剰摂取は生活習慣病や肥満の原因となる脂質ですが、一方で極端な摂取制限も心身に深刻なダメージを与えることがわかっています。

脂質が不足すると、エネルギーが足りなくなり、疲れやすい、やる気が起こらない、集中力が続かないなどの症状が現れることがあります。

また、脂肪が減って体温の維持ができなくなり、体が冷えて代謝が悪くなってしまいます。さらに、脂溶性ビタミンの吸収が悪くなるので、髪がパサつく、肌が荒れるなどの症状が起こりやすくなります。

なお、女性は男性に比べて便秘に悩みやすいと言われていますが、これには体質的な違いの他に脂質の摂取量も関わっていると言われています。

特にダイエット中の場合は便秘になりがちですが、脂質には排泄物を包んで腸内を移動しやすくする働きもあるため、極端に制限をするのではなく適量を摂取することは便秘解消に役立ちます。

脂質不足は脳にも大きな影響を与える

脂質が不足すると、神経伝達物質の一つであるセロトニンの細胞内の摂り込みが上手くいかなくなり、うつ傾向になりやすいと言われています。

また、コレステロールが不足すると免疫力の低下を招き、脳出血のリスクが高まることが研究結果として報告されています。

脂質は摂取する種類や摂り方が重要

年齢や性別などで異なりますが、一日に必要なエネルギーのうち、20~30%程度を脂質から摂るのが望ましいと言われています。

日本人の場合、平均は25%となっており、摂り過ぎを過剰に心配する必要はなさそうですが(これには個人差があり、摂取量をオーバーしている方も2~30%ほどいるというデータもあります)せっかく脂質を摂るならその種類や摂り方にもこだわってはみませんか?

脂質の中でも、飽和脂肪酸は体に悪影響を与えやすく、中性脂肪を増加させLDLコレステロールを増やして肥満や生活習慣病の原因となりやすいとされています。

これに対し、不飽和脂肪酸は上手に摂り入れることで、健康効果やダイエット効果が期待できる脂質となっています

一価不飽和脂肪酸について

一価不飽和脂肪酸の主な脂肪酸はオレイン酸です。

オレイン酸には、血液中のLDLコレステロールを減らす働きがあると言われており、不飽和脂肪酸の中では酸化しにくく、加熱調理にも強いという特徴があります。

オレイン酸が多く含まれる食品として有名なのは、オリーブオイルです。

近年日本では健康油がブームとなっており、オリーブオイルを選んで使っている方も多いと思いますが、その際気をつけたいのはオリーブオイルの種類です。

オリーブオイルの最高峰は、エキストラバージンオリーブオイルですが、これはオリーブオイルの実を絞ってろ過をしただけで、化学的な処理を一切加えていないものが該当します。

なお、比較的安価で求めやすいピュアオリーブオイルは、オリーブを絞ったものを精製し、添加物などが加えられています。

オレイン酸をしっかりと摂取するには、エキストラバージンオリーブオイルを選ぶようにするのがよいでしょう。

この他に、オレイン酸が多く含まれるのは次の食品です。

  • ひまわり油
  • 紅花油
  • ヘーゼルナッツ
  • マカダミアナッツ
  • アボカド

多価飽和脂肪酸について

多価不飽和脂肪酸は、多く含まれる脂肪酸によってn-3系、n-6系に分かれています。

n-3系には、青魚に多く含まれているDHAとEPA、αリノレン酸が該当します。

DHAは、学習能力を向上させる働きがあるとして大変注目を集めている成分です。EPAは血液の凝固を防ぎ、血流を促進する作用があると言われています。

αリノレン酸には、アレルギーの抑制作用や、血液中のLDLコレステロールを減らす働きがあると言われており、摂取後体内にて10%ほどがEPAやDHAに変換されます。

DHAとEPAは、サバやサンマなどの青魚やまぐろ、うなぎなどに多く含まれており、αリノレン酸はえごま油や亜麻仁油に多く含まれています。

なお、えごま油や亜麻仁油は加熱調理に適さないため、生のままで摂取するのがよいでしょう。

続いて、n-6系には主にリノレン酸があります。

リノレン酸が多く含まれるのはサラダ油です。

リノレン酸は体内で生成することができないため必須脂肪酸に分類されますが、適量を摂取する分にはLDLコレステロールを減らす働きがあるものの、過剰摂取するとHDLコレステロールも減らしてしまうため、摂り過ぎないことが大切です。

ダイエット中の脂質の摂り方

外食やコンビニ食、インスタント食品などは飽和脂肪酸の摂り過ぎに繋がるので控えましょう。

また食事は、一日一食は魚をメインとし、間食にはナッツ類がお勧めです。

生のまま摂取するのが好ましいえごま油や亜麻仁油は納豆に混ぜたり、サラダのドレッシングに活用するのがよいでしょう。

ただし、これらの成分も偏った摂り方は禁物です。

大事なのは、様々な種類を栄養バランスよく食べること。

肉類は飽和脂肪酸が多く含まれているため、ダイエット中はつい避けてしまいがちになりますが、筋肉や内臓を作るたんぱく質が豊富に含まれているので、必要がないと排除せずに脂身を減らすなど工夫をして適量を摂取するようにしましょう。

-食事を栄養素から見直そう

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