ファイトケミカルのページでも少し触れていますが、ここではカロテノイドについて深掘りしたいと思います。
目次
カロテノイドとは
カロテノイドは、自然界に広く存在する黄色~だいだい色~赤色の脂溶性色素です。
微生物や植物に含まれており、人を含む動物は体内でカロテノイドを生成することができないので、カロテノイドはカロテノイドを含む食物を摂取することで補います。
カロテノイドは現在までに700種類以上が見つかっていますが、一般的な食事によって摂取できるのは50種類ほどと言われています。
カロテノイドを含む食物には、緑黄色野菜を始め、果物、サケの赤身、卵黄などがあります。色鮮やかだと思う食物の多くに、カロテノイドが含まれていると考えてよいです。
カロテノイドは元々は微生物や植物の色となるものとして認識されていましたが、その後の研究にて強い抗酸化作用があることがわかりました。
そのため、今では健康目的以外にも、美容、ダイエットなどあらゆる側面にて活用されています。
カロテノイドは大きく分けて2種類
カロテノイドは、カロテン類とキサントフィル類の2つに分類されます。
カロテン類は炭素と水素のみで構成されるもの、キサントフィル類は分子内に酸素原子を含むものを指します。
カロテノイドが最初に発見されたのは1831年ですが、その時はまだ色素の構造成分だということしか分かりませんでした。
当時、β-カロテンがにんじんのだいだい色を作る成分として見つかったことから、にんじんの英語表記であるcarrotが語源となり、カロテンと名付けられました。
サケの身が赤く、卵黄が黄色の理由
カロテノイドは本来、動物の体内では生成できませんが、サケの赤身や卵黄など動物性の食品の中にはカロテノイドを含むものもあります。
これは、サケやにわとりがエサとして摂取している微生物や食物にカロテノイドが含まれるためで、摂取したカロテノイドが体内で蓄積して身などに色を付けています。
人でも同じ現象が起こります(みかんを食べ過ぎると手が黄色くなったりする)が、カロテノイドを含む食物を食べないようにすると、色素が蓄積しなくなるので色味はやがて消えていきます。
なお、カニやエビは元々の色は赤色ではありませんが、茹でると身が赤くなりますよね。その理由は、カニやエビに含まれるカロテノイドは、体内のたんぱく質と結合しているうちはくすんだ色をしていますが、熱が加えられることでたんぱく質から離れると、本来の色素である赤が目立つようになるからです。
ちなみに、卵黄が黄色なのはにわとりのエサにとうもろこしが多く使われるからです。たまにスーパーなどで卵黄がだいだい色の卵を見かけることがあると思いますが、これはとうもろこしの他にだいだい色のカロテノイドを含む花をエサとして食べています。
脂溶性のため油との相性がよい
脂溶性の成分は、水に溶けにくく油に溶けやすい性質を持つことから、油を使った調理によって体内での吸収率を高めることができます。
カロテノイドはすべて脂溶性の色素であるため、茹でたり煮たりするよりも油で炒めた方が体内での吸収がよくなり、効率よく摂取することができます。
抗酸化作用とは
カロテノイドは数多くの種類がありますが、そのどの成分にも共通する効果として抗酸化作用が上げられます。
抗酸化とは、酸化を抗(あらが)うと書く通り、体の酸化を防ぐことを言います。
体が酸化してしまう主な原因に「活性酸素」があります。活性酸素は紫外線や排気ガス、喫煙、食品添加物などの外的要因の他に、ストレスや加齢などでも増えるもの。活性酸素が体内で増えると、健全な細胞を酸化させてしまうため、老化や病気などを引き起こしやすくなると言われています。
抗酸化作用のある成分は、この活性酸素を除去する働きに優れています。
自らを酸化することで細胞の酸化を防ぎ、老化や病気の予防に繋がります。
カロテノイドの種類と効果
カロテノイドは数多くの種類がありますが、ここでは私達の食生活において身近な種類をいくつかピックアップしたいと思います。また、種類別に抗酸化作用以外の効果についても併せてご紹介します。
β-カロテン
カロテノイドの中で最も知名度が高く、聞き馴染みがある人が多いと思われるのが、カロテンの一種であるβ-カロテンではないかと思います。
厚生労働省は一日120gの緑黄色野菜の摂取を推奨していますが、緑黄色野菜は色のついた野菜という意味ではなく、β-カロテンを含む野菜の総称を言います。つまり、それだけβ-カロテンには様々な効果が期待できると言えるのです。
β-カロテンは体内に入ると、プロビタミンA(ビタミンA前駆物質)に変化し、ビタミンAを摂取した時と同様の効果を得ることができます。
ビタミンAには、喉や鼻の粘膜を強化して感染症を防いだり、皮膚の健康を保つ、血管を丈夫にする、暗いところでも物を見やすくする(夜盲症の予防)、免疫細胞を活性化させるなどの働きがあります。
なお、β-カロテンから変換されないビタミンAにレチノールがありますが、レチノールは過剰摂取すると肝機能障害を起こす恐れがあります。一方、β-カロテンは摂り過ぎても必要量だけがプロビタミンAへと変換されるため、ビタミンAの過剰摂取を起こす恐れがありません。
β-カロテンを含む食品には、次のようなものがあります。
- にんじん
- 西洋かぼちゃ
- モロヘイヤ
- ほうれん草
- パセリ
- バジル
- 豆苗
- 春菊
- リーフレタス など
α-カロテン
α-カロテンはβ-カロテンと構造がとても近いため性質もよく似ていて、β-カロテンと同様に体内でプロビタミンAに変わりますが、ビタミンAの前駆物質としては、α-カロテンはβ-カロテンよりもその効果が劣ると言われており、さらに転換率も半分程度だと言われています。
ただし、抗酸化作用については、β-カロテンよりもα-カロテンの方が高いと言う研究データもあります。
α-カロテンを含む食品には、次のようなものがあります。
- にんじん
- 西洋かぼちゃ
- パーム油 など
リコピン
抗酸化作用を持つカロテノイドの中でも、特にその効果が高いと言われているのがリコピンです。
リコピンの抗酸化作用は、β-カロテンの2倍、ビタミンEの100倍に及びます。
抗酸化作用の一つに、血管を丈夫にして血流が促進する働きがあります。これによって、血液中の悪玉コレステロールが排出されやすくなり、動脈硬化や高血圧などの生活習慣病の予防や改善に効果が期待できます。
また、血行がよくなると、血液の温かさによって冷えが改善したり、体の隅々にまで酸素や栄養が運ばれるので、代謝が上がってダイエット効果も得られます。
さらに、リコピンは活性酸素の中でも酸化力の高い一重項酵素に対する抗酸化力が強いため、シミやしわ、たるみなどの肌の老化を抑える働きにも優れています。
リコピンを含む食品には、次のようなものがあります。
- トマト
- グァバ
- ピンクグレープフルーツ
- すいか
- 赤パプリカ など
※リコピンを摂るためにトマトを食べている人は多いと思いますが、実は生のままのトマトを食べても吸収率はそれほど高くありません。リコピンを効率よく摂取するには、トマトは炒めるなど加熱処理をするのがよいです。また、トマトジュースやケチャップなどの加工品の方が、生のトマトよりも多くのリコピンを含んでいるため、そのような食品を上手に利用するのもお勧めです。管理人こぶたはトマトジュースとヨーグルトを混ぜて、温めて飲むのがお気に入りです。
ルテイン
ルテインは、人の目の水晶体や黄斑部などにもともと存在するカロテノイドです。
黄斑部は網膜の中心にあり、物を見る視機能において重要な役割を果たしていますが、眼球は体外に露出していることから常に外部に晒されており、紫外線やブルーライト(パソコンやスマホ、テレビなどが発する光)の影響を受けやすくなっています。
そこで黄斑部に多く存在するルテインが、紫外線などから発生する活性酸素を除去することで、目の健康を保っています。
ルテインが不足すると、黄斑変性症や白内障などの目の病気になりやすくなると言われているため、日ごろからブルーライトを浴びることが多い人は特に、ルテインを意識して摂取することが大切です。
ルテインを含む食品には、次のようなものがあります。
- 野沢菜
- ほうれん草
- チコリ
- ケール
- クレソン
- パセリ
- かぼちゃ
- にんじん
- マリーゴールド(花弁)など
アスタキサンチン
アスタキサンチンの抗酸化作用は、β-カロテンの100倍、ビタミンEのおよそ1,000倍、ビタミンCの6,000倍とも言われており、リコピンをも凌ぐ次世代の抗酸化物質として今、大変注目を集めています。
アスタキサンチンの抗酸化作用よって、動脈硬化やメタボリックシンドロームなどの予防や、眼精疲労の改善、眼疾患の予防や改善、免疫力の向上など様々な効果が期待できますが、中でも近年特に関心が寄せられているのが、美白・美肌効果です。
紫外線を含む日光は皮膚に光老化を起こし、しわやシミ、たるみを作りますが、アスタキサンチンの強い抗酸化力によって活性酸素を除去することで、光老化を予防、改善する効果があると言われています。
アスタキサンチンを含む食品には、次のようなものがあります。
- 桜エビ
- サケ
- イクラ
- カニ
- 金目鯛
- キンキ
- キングサーモン など
アスタキサンチンの摂取の方法として、近年注目されているのが淡水性単細胞緑藻類の一種であるヘマトコッカス藻です。
ヘマトコッカス藻は、アスタキサンチンを生成できるプランクトンですが、高濃度のアスタキサンチンを生成・蓄積できることがわかっており、現時点ですでに化粧品やサプリメントなど幅広い分野で利用されています。
カプサンチン
カプサンチンは、β-カロテンの1.5倍、リコピンと同等程度の抗酸化作用を持つ赤色色素で、赤ピーマン、パプリカ、トウガラシに多く含まれています。
ちなみに赤ピーマンは通常の緑色のピーマンと種類が違うわけではなく、ピーマンを完熟させたものが赤ピーマンです。緑色のピーマンの時は色素成分のクロロフィルを多く含んでいますが、長く日光に当たることでクロロフィルが分解され、赤色色素のカプサンチンが作られます。
なお、トウガラシに多く含まれるカプサイシンとよく名前が似ていますが、カプサイシンはトウガラシの辛味成分のため、カプサンチンとは別の成分となります。
カプサンチンには、HDL(善玉)コレステロールの酸化を防ぐ働きがあることから、動脈硬化など生活習慣病の予防や改善の効果があると言われています。
ゼアキサンチン
ゼアキサンチンは、ルテインと同様に目の水晶体や黄斑部を構成する成分で、紫外線やブルーライトによる目へのダメージを予防、改善する効果が期待できます。
ゼアキサンチンは、体内でルテインの代謝によって生成される構造体異性なので、構造がとてもよく似ているため、これまでは作用もほとんど変わりないと思われていましたが、近年の研究ではゼアキサンチンとルテインは黄斑部の中でも異なった場所でそれぞれ働くことがわかってきました。
黄斑変性症や白内障などを予防するには、ルテインだけを摂取するのではなくゼアキサンチンも摂取することが大切だと言われています。
ゼアキサンチンが含まれる食品には、次のようなものがあります。
- パプリカ
- ほうれん草
- とうもろこし
- クコの実
- ケール
- スピルリナ
β-クリプトキサンチン
β-クリプトキサンチンは、他のカロテノイドと比べてまだまだ不明な点が多いものの、β-カロテンと構造が似ており、β-カロテンと同様にプロビタミンAとして体内で変換されることがわかっています。
また、体内で蓄積される期間が他のカロテノイドに比べて長く、β-クリプトキサンチンを含む食品を摂取することで、骨粗しょう症のリスクを下げたり、脂質代謝異常症や動脈硬化、糖尿病などの発症が抑える効果があることが報告されています。
さらに、β-クリプトキサンチンは人の皮膚にもともと存在していて、ヒアルロン酸を増やす働きがあることから、美肌や美白効果も期待できると考えられています。
β-クリプトキサンチンが含まれる食品には、次のようなものがあります。
- みかん
- オレンジ
- 柿
- でこぽん
- パパイヤ
みかんの中でも、日本で収穫される温州みかんは、β-クリプトキサンチンの含有量が特に多いと言われています。温州みかんのシーズンは冬ですが、β-クリプトキサンチンは作用期間が長いため、春になっても体内に残り、その効果を発揮してくれると言われています。