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黒酢とは
酢が健康によいのは、世間一般に広く知られていること。そして、酢よりも黒酢の方がより体によいということも、よく知られているかと思います。それでは、酢と黒酢には一体どのような違いがあるのでしょうか。
原料と製法の違い
現在、酢として販売されているものは、原料を酢酸発酵(酢酸菌の働きによって、エタノールから酢酸が生成されるもの)させて作る醸造酢が主となっています。
醸造酢はさらに、穀物を原料とする穀物酢と果物を原料とする果実酢に分かれています。
穀物酢には、米(精米)を原料とする米酢と、玄米や大麦を原料とする黒酢がありますが、世間一般的に穀物酢と認識されているのは小麦やとうもろこしなどが原料のものです。
これらを区別するため、米酢は米酢、黒酢は黒酢、それ以外は穀物酢と呼ぶ場合が多いです。
また、米酢や黒酢、穀物酢は原料が異なるだけではなく、製造期間も全く違います。米酢や穀物酢は製造期間が3~4ヶ月ほどなのに対し、黒酢は1~3年と長期間に渡ります。
さらに米酢や穀物酢は薄い黄色ないし黄金色ですが、黒酢は琥珀色と、色にも違いがあります。これは、同じ発酵食品である味噌や醤油と同じ原理で、熟成に時間をかけるほど味や香りにコクが生まれ、色が濃く仕上がるからです。
アミノ酸の含有量の違い
玄米を原料とする黒酢は、精米によって除去されてしまう糠や胚芽がそのまま残っているため、栄養価が高くなります。
アミノ酸の含有量を比べてみると、米酢に対し黒酢は約10倍も多くアミノ酸が含まれています。
なお、果実酢については穀物が含まれていないので、アミノ酸の含有量は低くなっています。
酢の歴史
酢は世界最古の発酵調味料と言われており、日本を始めとしたアジア地域のみならず、ヨーロッパでも長い歴史を持っています。
酢のことを英語でビネガー(vinegar)と言いますが、これはvin(ぶどう酒)+egare(すっぱい)というフランス語を合わせてできた言葉で、その名の通り、ワインが発酵してできたのが酢の始まりと言われています。
日本でも、縄文時代や弥生時代には果実や米を発酵させて酢を作っていたという説がありますが、酢の醸造技術が日本に伝わったのは4~5世紀(古墳時代)とされています。
一般的な調味料として庶民が酢を使用するようになったのは江戸時代からで、それまでは酢は一部の上流階級の人のみが漢方薬や薬、高級調味料として使用していました。
代表的な和食の一つである寿司(握り寿司)は、江戸時代後期に登場したとされていますが、これには酢の使用が一般に広く普及したことが関係していると言われています。
世界各国の黒酢
香醋(こうず)
中国で生まれた黒酢で、玄米やコーリャン(イネ科の穀物)、もち米などを原料にして作られるもの。日本の黒酢よりも酸味が強く、アミノ酸が豊富に含まれています。
バルサミコ酢
ぶどうの濃縮果汁を原料とし、樽で長期熟成させた酢。イタリアの黒酢と呼ばれています。
黒酢の効果
アミノ酸を始めとした栄養成分が多く含まれる黒酢には、次のような効果があると言われています。
疲労回復
黒酢に多く含まれるアミノ酸は、筋肉や内臓、ホルモンなどの原料となる成分です。
摂取によってこれらの細胞の働きを活発にし、エネルギーの代謝が促されるため、疲労を回復する効果があると言われています。
また、黒酢に含まれる酢酸は体内でクエン酸に変化します。クエン酸には、エネルギーを産み出すTCAサイクル(クエン酸回路)を活性化させる働きがあり、アミノ酸と同様に疲労回復効果が期待できると言われています。
美肌効果
アミノ酸は皮膚や爪などの原料になる成分のため、肌の調子を整える効果があると言われています。
また、酢酸には腸内の悪玉菌を除去する働きや、炭酸ガスを発生させて腸壁を刺激して、お通じを改善する効果があると言われています。
便秘が続くと、腸に溜まった便が腐敗して有害ガスを発生させ、それが腸壁を通じて血液へと流れ込み、細胞の働きを妨げて代謝を低下させてしまいます。便秘になると肌荒れしやすくなるのはこのためです。黒酢によって便秘が解消すると、細胞の働きが活発になり、肌の調子を整えやすくなります。
免疫力の向上
酢には昔から殺菌・抗菌作用があることが知られていますが、体内においても細菌の増殖を抑える働きがあります。
また、近年の研究では、黒酢に含まれるアミノ酸には、免疫細胞のエネルギー源となるものが存在することがわかりました。これにより、免疫細胞の働きを助け、免疫力をアップさせる効果が期待できます。
生活習慣病の予防や改善
黒酢に含まれる有機酸(アミノ酸や酢酸)には、血液をサラサラにして流れをよくする働きがあります。
血液がドロドロだと、血栓ができやすくなったり、血液を流すために心臓が負担を強いられ、高血圧になりやすくなります。また、長年そのような状態が続くと、血管内がボロボロになり、しなやかさを失ってしまう動脈硬化を起こしやすくなります。
このような症状を放っておくと、やがて心筋梗塞や脳卒中などの重篤な病気の発症リスクを高めてしまうことから、血行のよい状態を維持することは、これらの病気の予防や改善に繋がると考えられます。
ダイエット効果
アミノ酸には、筋肉の増強や脂肪分解の促進を促す働きがあることから、ダイエットに役立つと言われています。
また、黒酢には脂質や糖質の代謝を促進するビタミンB群が含まれているため、食べた物を脂肪として蓄積しにくくなると言われています。
黒酢(酢)の摂取にまつわる噂、これって本当?
酢を摂ると体が柔らかくなるというのは本当?
現時点で、酢を摂ることで体の柔軟性が高まるということは、科学的には証明されていません。
このように言われるようになった理由は、骨付きの魚を酢で煮ると、骨からカルシウムが溶け出すため、骨ごと食べられるくらい柔らかくなることから、人にも同じような働きがあると考えられたようです。
しかし、人が酢を摂ったからと言って、魚などと同じように体が柔らかくなることはありません。
酢が歯を溶かしてしまうというのは本当?
骨とは違い、直接酢に触れる歯は、酢酸の働きによって歯が溶けてしまうことがあります。
酢酸によって溶けた歯は酸蝕歯と呼ばれ、虫歯や歯周病に次ぐ第三の歯科疾患として、近年問題となっています。
酸蝕歯は、酢を始めとした酸性の強い食品を摂ることで歯のエナメル質が剥がれ、カルシウムが流れ出てしまうことが原因で起こります。
黒酢の摂り方
- 黒酢を調味料として使うのではなく、健康や美容、ダイエットなどの目的で飲料として摂る場合は、原液のままではなく必ず水やお湯で薄めて飲むようにしましょう。(割合は商品によって異なるため、表示を確認して下さい)
- 黒酢を摂った後は水で口の中をすすぐと、歯への負担を抑えることができます。
- 空腹時に黒酢を摂ると胃を荒らしやすくなるので、食後がよいです。
- 黒酢の摂取量は一日15~30㏄。これを朝食、昼食、夕食の後の3回で摂るようにするとよいです。
調味料として使う
黒酢を飲料として摂るのに抵抗があるという方は、調味料として使っても良いです。
黒酢には肉や魚のたんぱく質を分解する働きがあるため、黒酢を加えることでいつもより骨離れがよく、柔らかく仕上げることができます。
黒酢を使った主な料理は「酢豚」や「肉団子」、「南蛮漬け」など。
また、もっと手軽に黒酢を料理に取り入れたい場合は、市販のドレッシングに加えたり、薄切りの玉ねぎと合えて黒酢たまねぎにするのがお勧めです。黒酢たまねぎは、調理済の肉や魚にかけても、冷奴やそうめんなどの薬味にしても、そのまま食べても美味しく頂けます。
サプリメントを利用する
黒酢を簡単に摂取したい人はサプリメントがお勧めです。
しかし、黒酢サプリメントを選ぶ時は、主原料となる黒酢がどのような製造工程を踏んで作られているのかをしっかりと調べることが大切です。
黒酢サプリメントの中には、黒酢が時間短縮で作られているものもあります。それでは本来の黒酢の効果を得ることは難しくなってしまうので、必ず製造方法・工程を確認するようにして下さい。
また、サプリメントには必要な成分以外が含まれていることも多いため、余分な成分がなるべく入っていないものを選ぶようにしたいです。
黒酢の美味しい飲み方
黒酢は風味が強く、飲みづらいと感じる人も多いですが、そもそも黒酢は「飲む酢」として開発された経緯があり、実は酸味は他の酢よりも抑えられていてまろやかです。ただし、味や香りは独特で強いので、それが飲みづらさに繋がる場合もあります。
そこでここでは、黒酢の美味しい飲み方を紹介したいと思います。
黒酢+牛乳
牛乳に黒酢を入れると、ヨーグルトのような独特の飲み口になります。はちみつを少量加えると、さらに飲みやすくなります。
黒酢+オレンジジュース
黒酢が加わることにより、いつものオレンジジュースが少し高級な味に変わります。オレンジジュースが酸っぱいので、その酸味に黒酢が隠れて飲みやすくなります。