アスタキサンチンについて

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アスタキサンチンとは

アスタキサンチンはカロテノイドの一種で、赤い色素のことを言います。

カロテノイドとは、自然に存在する色素の総称で、身近なものでは緑黄色野菜に多く含まれている成分です。ニンジンがオレンジ色なのもトマトが赤いのも、カロテノイドが多く含まれているからです。

ちなみに、ニンジンにはβ-カロテン、トマトにはリコピンというカロテノイドが多く含まれています。

アスタキサンチンは、β-カロテンやリコピンと比べて聞き馴染みがないという方も多いかも知れませんが、サケやカニ、エビなどの海産物に多く含まれているため、その名前を知らなくても、普段の食事にてごく当たり前に摂取している成分です。

アスタキサンチンの由来

カロテノイドは、炭素と水素原子のみで構成されるカロテン類と、それに酸素を含むキサントフィル類に分かれており、アスタキサンチンはキサントフィル類に属しています。

そこに、アスタキサンチンの発見に至ったのがロブスターの甲羅だったことから、古代ギリシャ語でロブスターを意味するAstacus(アスタクス)と、xanthophyll(キサントフィル)を合わせ、Astaxanthin(アスタキサンチン)と名付けられました。

サケやカニはアスタキサンチンを含んでいない

アスタキサンチンは、サケやカニなどの海産物に多く含まれていると言いましたが、実はサケやカニにはアスタキサンチンを生成する働きは備わっていません。

そもそも、サケは赤身魚ではなく白身魚。それなのになぜ身が赤いのか、不思議に思ったことはありませんか。

サケは、アスタキサンチンを生成するヘマトコッカス藻を食べているオキアミをエサとしているため、間接的にアスタキサンチンを摂取し体内に蓄積しています。このため、サケの身は赤くなるのです。

サケが産む卵(イクラ)が赤いのも、親がアスタキサンチンを摂取しているから。

なお、アスタキサンチンの量が足りないとイクラは孵化することができないので、アスタキサンチンはサケが子孫を残すために、とても重要な役割を担っていることになります。

カニやエビを茹でると赤くなるのはなぜ?

サケの身が赤い理由はわかりましたが、ここでまた新たな疑問です。

カニやエビは最初から甲羅が赤いわけではなく、元は灰色。それが茹でると赤色に変化します。

カニやエビにはアスタキサンチンが含まれているので、赤色になるのは何ら不思議ではありませんが、どうして茹でる前と茹でる後で色が違うのでしょうか。

これは、カニやエビの場合、体内に入ったアスタキサンチンは、たんぱく質と結びついて蓄積されるのですが、その際にアスタキサンチンは赤色からグレーや青緑色に変わるからです。

そのため、海で泳いでいる時のカニやエビは赤くありません。

それが、加熱によって結合しているたんぱく質が変化すると、アスタキサンチンはたんぱく質から分離するため、本来の色を取り戻して赤くなります。

このことから、カニやエビは茹でる前と茹でた後では色が違うのです。

アスタキサンチンの効果

サケが産まれた川に戻って産卵をすることは、よく知られています。サケは川で誕生すると、一旦海に出て回遊をし、そして再び故郷の川へと戻ってきて子孫を残します。

広い海をあのサイズの体で泳ぐだけでも大変そうですが、川を遡上する時は流れに逆らうためかなりの体力を使います。想像するだけでも相当のストレスを強いられる環境ということがわかりますが、ストレスは活性酸素を増やしてサケの体を蝕んでしまいます。

その時に活躍するのが、アスタキサンチンです。

アスタキサンチンは、優れた抗酸化作用を持ち、活性酸素から細胞を保護する働きがあります。

また、イクラが赤いのは、親が摂取したアスタキサンチンを受け継ぐことで、産卵後の紫外線によるダメージから自らの身を守ることができるからです。

アスタキサンチンにこのような強い抗酸化作用があるのは、アスタキサンチンを生成するヘマトコッカス藻に秘密があります。

ヘマトコッカス藻は、自然界に多く分布している藻の一種ですが、通常はクロロフィルを持ちその色は緑色をしています。しかし、環境が悪化すると、細胞を休眠状態にして危機を脱しようとします。この時ヘマトコッカス藻は赤く色づくのですが、この赤色こそアスタキサンチンです。

アスタキサンチンの抗酸化作用は、抗酸化物質としてよく知られているビタミンEの1,000倍、ビタミンCの6,000倍とも言われており、そのため様々な効果が期待できるとして、サプリメントなどの健康食品や化粧品に利用されています。

ここでは、アスタキサンチンの摂取によって期待できる効果をご紹介したいと思います。

美肌効果

アスタキサンチンの強い抗酸化力には、肌のしわやたるみを軽減、改善する効果があると言われています。

抗酸化力とは、簡単に言うと活性酸素を除去する働きのことを言います。

活性酸素は白血球などのように免疫機能の一つとして働く役割を担う反面、体内で増えすぎると健全な細胞を攻撃して酸化させ、老化を早めてしまいます。活性酸素によって細胞の働きが弱まると、肌のハリやキメを整えるコラーゲンなどを作り出すことができなくなり、しわやたるみが起こりやすくなってしまいます。

そこで有効なのが、抗酸化作用を持つ成分を補うこと。

とは言え、これまでもβ-カロテンやビタミンEなどの抗酸化物質は存在しており、これらも肌の衰えを改善するために効果があるとされています。

しかしながら、β-カロテンは主に細胞膜の内側、ビタミンEは細胞膜の外側というように働ける場所が決まっていたため、その効果を思う存分発揮することができませんでした。

それが、アスタキサンチンは細胞膜の内側と外側の両方に働きかけるため、細胞膜全体を守ることができ、効果が出やすいと言われています。

脳機能の向上

マウスによる実験段階ですが、アスタキサンチンの長期的な摂取により、記憶や学習能力に関わる海馬の働きを活性化させ、神経新生を促して機能の向上が期待できることがわかっています。

また、アスタキサンチンには、脂肪酸が活性酸素によって酸化させられることで生じる過酸化脂質の増加を抑える働きがあると言われています。

これにより、脳梗塞などの病気のリスクを下げる効果が期待できます。

糖尿病の予防や改善

医薬品製造会社の臨床研究によって、アスタキサンチンを摂取した被験者の糖代謝が改善したことがわかりました。

また、マウスの実験ではアスタキサンチンに糖尿病性腎症を抑制する効果があることが認められました。

糖尿病性腎症は糖尿病が原因で起こる腎臓機能の低下ですが、モデルのマウスにアスタキサンチンを投与したところ、尿中アルブミン濃度が低下し、腎炎を抑える働きがあることがわかっています。

このようなことから、アスタキサンには糖尿病の予防や改善の他、糖尿病が由来の腎臓機能の低下を抑える働きも期待できると言われています。

眼精疲労の予防や改善

アスタキサンチンには、血液の流れを促して、目の周囲にある毛様体筋の疲労を回復させ、目の疲労を軽減する効果があると言われています。

眼精疲労とは、夜寝て起きた後でも続く目の疲労のことを言います。

ひどくなると肩こりやめまい、吐き気などを起こして日常生活に支障が出てしまうため、早めの対策が必要となりますが、パソコンの長時間利用などが原因で現代は眼精疲労に悩む人が増えているそうです。

眼精疲労の改善にはルテインなどの成分が元々有名ですが、最近ではアスタキサンチンの効果に対する認知度も上がっており、サプリメントなどを利用する人が増えています。

動脈硬化などの改善や抑制

動脈硬化は、血管が硬くなることで血液の流れを阻害し、高血圧やメタボリックシンドロームなどの生活習慣病を引き起こしてしまう原因となるものです。

アスタキサンチンの抗酸化作用によって、血液の流れを促すだけではなく、老化を防いで血管をやわらかく保つことで、動脈硬化を始めとした病気の改善や抑制に効果があると言われています。

筋肉疲労の予防や回復

健康のために運動を行うのはよいことですが、その反面酸素を多く取り込むことで、体内での活性酸素量を増やし、筋肉細胞膜を破壊して筋肉疲労が起こりやすいと言われています。

アスタキサンは活性酸素を除去する働きがあるため、運動前に摂取しておくと、筋肉疲労を起こす活性酸素を抑えることができるので、筋肉疲労を予防したり、筋肉痛の回復を早める効果があると言われています。

抗炎症作用

体内に細菌などが侵入した場合、免疫機能として防御反応が起こるのが炎症作用です。

そのため、炎症作用自体は細菌などの侵入を防ぐ働きを行っていますが、この働きが過剰になり過ぎると、強い痛みや発熱などを引き起こしたり、ガンなどの発生の原因になると言われています。

アスタキサンチンには、このような症状を抑える働きがあると言われています。

自律神経のバランスを整える

自律神経とは、交感神経と副交感神経から成るもので、手足を動かすなどのように私達の意思で動かすことのできる神経ではなく、呼吸や拍動、内臓の働きなどに関わる神経になります。

交感神経は仕事に集中をする、運動をするなどの時に心身を興奮させる作用のあるもので、一方の副交感神経はリラックスを促す働きがあります。

通常はこの2つが一日の中で交代して働くことでバランスをとっていますが、ストレスなどが原因でバランスが崩れると、交感神経が優位の状態が続いて体調不良が起こってしまいます。

アスタキサンチンには、副交感神経を優位の状態に促す働きがあると言われており、自律神経のバランスを整えて健康な状態を保ってくれます。

アスタキサンチンを多く含む食品

  • サケ
  • マス
  • イクラ
  • 筋子
  • キンメダイ
  • キンキ
  • メバル
  • アマエビ
  • サクラエビ
  • ロブスター
  • ザリガニ
  • オキアミ など

アスタキサンチンの摂り方や化粧品の使い方

アスタキサンチンは脂溶性の成分のため、油で調理することで効率よく摂取することができます。

また、アスタキサンチンは分子が大きいため、そのままでは肌に浸透しにくいと言われています。そのため、アスタキサンチン配合の化粧品を選ぶ時は、低分子化されたものを選ぶのがよいです。

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