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高カカオチョコレートとは
ここ数年で急激に売り上げを伸ばしている高カカオチョコレート。
高カカオチョコレートとは、カカオの含有量が70%を越えるものを指します。
一般的に販売されているチョコレートは、カカオの含有量が30~40%程度と言われているので、高カカオチョコレートにはその2~3倍も多くのカカオが含まれていることになります。
カカオの含有量が100%に近ければ近いほど、ミルクや砂糖の使用量が少なくなるため、チョコレートを食べたいけれど糖質を控えたいと思っている人にとって、高カカオチョコレートにはメリットがあります。
しかし、高カカオチョコレートがここまで注目されるようになったのは、それだけが理由ではありません。
高カカオチョコレートには様々な成分が含まれており、中でもカカオポリフェノールとカカオバターの2つに、健康や美容に役立つ様々な効果があることが知られてきたからです。
カカオポリフェノールの効果
カカオポリフェノールは、チョコレートの原料であるカカオに含まれているポリフェノールの一種です。
チョコレートの独特の風味は、カカオポリフェノールが素となっています。
カカオポリフェノールがどのようなものかよく知らなくても、ポリフェノールが体によいということは一般的に知られていることですよね。
カカオポリフェノールには、主に次の3つの大きな効果があると言われています。
抗酸化作用
ポリフェノールは、植物が自らを活性酸素から守るために生成する成分です。
例えば、赤ワインの原料となるブドウは、皮が赤紫色をしていますが、これは皮にアントシアニンというポリフェノールを多く含まれているからです。
皮を濃い色で覆うことで日光を吸収し、活性酸素の増加を抑えています。
なお、高カカオチョコレートはその他のポリフェノールを多く含む食品(赤ワインやりんごなど)に比べてポリフェノールの含有量が多いため、ポリフェノールを摂取しやすいと言われています。
活性酸素が人に与える影響
活性酸素には、鉄が酸素によって錆びてしまうのと同じように、体内の細胞を酸化させてしまう力があります。
細胞が酸化すると、動脈硬化を始めとした生活習慣病や、がん、白血病などの発症リスクが高まる恐れがあります。
また近年は、アレルギーの発生や症状の重症化にも活性酸素が関わっていることがわかってきています。
さらに、細胞の酸化は老化を進めることにも繋がり、肌のしわやシミ、くすみなどの原因にもなります。
体には元々、活性酸素を除去する働きが備わっていますが、加齢と共にその働きが衰えてしまうため、病気や老化が起こりやすくなってしまいます。
このようなことから、抗酸化作用のあるポリフェノールを摂取することで、活性酸素の除去を促し、病気の予防やアンチエイジングに役立つと考えられています。
血行や血圧の改善
カカオポリフェノールには、血管壁の炎症を鎮める働きがあると言われています。
血管壁に炎症が起こるとそこがコブのようになり血液の流れが悪くなってしまいますが、ポリフェノールが炎症を抑えることでコブが解消されて血管内が広くなり、血液の流れがよくなります。
また、狭い血管内と通ると血液の流れが速くなって高血圧になりやすくなりますが、血管内が十分な広さを保つことで流れが正常になり、高血圧の改善に繋がります。
さらに、血行がよくなると、温かい血液を末端まで巡らせることができるので冷え性の改善にも役立ちます。
近年の研究では、カカオポリフェノールには炎症の鎮静以外にも、血管を健やかに保つ働きがあることもわかってきています。
脳機能活性化
脳には、神経細胞の再生や成長を促すBDNF(脳由来神経栄養因子)と呼ばれる物質がありますが、カカオポリフェノールにはこのBDNFを増やす作用があると言われています。
また、血流改善作用によって脳への血液量が増えることで、記憶力の向上や認知症の予防に役立つと考えられています。
さらに、BDNFの分泌量が低下するとうつ病の症状リスクが高まることが近年の研究で示唆されており、BDNFを増やす働きのあるカカオポリフェノールにうつ病などの精神疾患の予防や改善効果が期待されています。
カカオバターの効果
カカオバターは、チョコレートの原料であるカカオ豆を粉砕してすり潰したカカオニブから抜き取った脂肪分のことを言います。
黄色がかった白色をしているのが特徴です。
融点が30~35度なので、人の体温でもすぐに溶けてしまいます。チョコレートを口に入れるとあっという間に溶けてしまうのは、カカオバターが含まれているからです。
脂肪分のため、食べると太るのでは?と思うかも知れませんが、カカオバターには以下の4つの成分が含まれていることで、適量の摂取であればむしろダイエットや美容効果が期待できると言われています。
抗酸化作用を持つステアリン酸
ステアリン酸は飽和脂肪酸の一種で、カカオバターの主成分です。
抗酸化作用が高く、殺菌作用もあるので、肌の老化を防いだり、皮膚を清潔に保つ働きがあります。
そのため、化粧水や美容液、石鹸に多く利用され、美肌を作る成分として知られています。
なお、ステアリン酸は体内への吸収率が低いため、摂取しても脂肪になりにくいという特徴を持っています。
悪玉コレステロールの増加を防ぐオレイン酸
オレイン酸は、不飽和脂肪酸の一種でオリーブオイルに多く含まれています。
オリーブオイルは今や、健康油の代名詞的な存在となっていますが、その理由はオレイン酸にあります。なぜなら、オレイン酸には血中の悪玉コレステロールの増加を防ぐ働きがあるからです。
悪玉コレステロールが増えると、血中で血栓を作り、高血圧や動脈硬化の原因になる場合がありますが、オレイン酸の働きによってこれらの生活習慣病を予防・改善する効果が期待できます。
必須脂肪酸のリノール酸
必須脂肪酸とは、体内で合成ができないため、食物から必ず摂取する必要のある脂肪酸のことを言います。
リノール酸には、コレステロールを下げる効果があり、生活習慣病の予防や改善に役立ちます。
美肌を作るパルチミン酸
パルチミン酸は飽和脂肪酸の一種で、抗酸化作用があります。
特に、皮膚や粘膜の再生や修正を活性化させる働きのあるビタミンAは、パルチミン酸が不足すると安定しなくなり、しわやシミ、たるみなどの原因になると言われています。
その他の成分の効果
高カカオチョコレートには、カカオポリフェノールやカカオバター以外にも、健康や美容に役立つ成分が含まれています。
カカオプロテイン
カカオ豆には、たんぱく質の一種であるカカオプロテインが含まれています。
カカオプロテインは難消化性という性質を持ち、胃で消化されずにそのまま大腸に届きます。また、カカオ豆には食物繊維も多く含まれているので、2つの力で腸内環境を整え、便秘解消に効果が期待できます。
さらに、食物繊維には血糖値の上昇を抑える働きもあります。
そのため、高カカオチョコレートは低GI食品となっており、普通のチョコレートのGI値が91なのに対し、高カカオチョコレートは18~29(※)とかなり低くなっています。※商品によって異なります。
テオブロミン
食物ではカカオ豆以外にはほとんど含まれていない特有の成分です。
テオブロミンには、カカオポリフェノールと同様に、血管を拡張させて血流量をアップさせる働きがあると言われています。
また、脳内物質のセロトニンを活性化し、ストレス軽減、食欲抑制、リラックスを促す効果があると言われています。
高カカオチョコレート摂取時の注意
高カカオカカオチョコレートは、カカオポリフェノールを始めとした成分による様々な効果が期待できる一方で、以下のような注意をする必要があります。
糖質は低いが脂質は高い
カカオ由来の成分の含有量が多いため、脂肪分は普通のチョコレートと比べて1.2~1.5倍も多く含まれています。
ステアリン酸、パルチミン酸、リノール酸にいくら健康や美容効果があるといっても、脂質であることに変わりはありません。摂り過ぎると逆に肥満を招く恐れがあるため、食べ過ぎないように注意しましょう。
また、一度にたくさん食べてもポリフェノールは蓄積しておくことができないので、毎日適量を食べるのがよいと言われています。
高カカオチョコレートは食品なので、薬のように明確に摂取量が決まっているわけではありませんが、一日25g程度食べるのが効果的とされています。
25gだと摂取カロリーは150㎉程度となるため、間食として食べるならそこまでカロリーの摂り過ぎにはならないでしょう。
成分表を確認しましょう
高カカオチョコレートは、カカオの含有量がどれくらいなのかがわかるように表示されています。
一般的に高カカオチョコレートに分類されるのは、カカオの含有量が70%となっているので、高カカオチョコレートの効果を得たい場合は70%以上の商品を選ぶようにしましょう。
また、商品によっては同じ程度のカカオ含油量でも、砂糖や乳脂肪の割合が異なります。
砂糖や乳脂肪が多いほど食べやすくなりますが、健康や美容効果は薄れてしまうので、購入時にはカカオの含有量と合わせて成分表を確認するようにしましょう。
妊婦さんや子どもの摂取について
高カカオチョコレートには、テオブロミンやカフェインが多く含まれています。
これらは適量であれば心身によい効果をもたらしますが、過剰摂取すると神経が興奮してしまい、頭痛や不眠などを引き起こす恐れがあります。
そのため、カフェイン摂取に制限のある妊婦さんやお子さんはもちろんのこと、偏頭痛を持っている人も食べ過ぎないようにしましょう。
カドミウムやニッケルを含んでいる
カカオ豆には土壌に含まれるカドミウムやニッケルなどの重金属が含まれており、カカオ成分の含有量が多い高カカオチョコレートでは、普通のチョコレートよりもその量が多い(ニッケルの場合、2~4倍)という調査結果が出ています。
ニッケルは経口摂取でもアレルギーを発症する恐れがあることから、ニッケルアレルギーのある人は摂取には十分注意をして下さい。