ポリフェノールには「体によいもの」と言うイメージはあるものの、具体的なことはよくわからないと言う方も多いのではないでしょうか。このページではポリフェノールとは、一体何なのか?なぜ体に良いのか?について学びたいと思います。
目次
ポリフェノールとは
ポリフェノールは、植物に含まれる化学物質の総称です。
ポリ(たくさんの)フェノール性水酸基を持つ化合物という意味があり、植物の苦味、渋味、色素などを構成する成分で、自然界には5,000種類を超えるポリフェノールが存在しています。
日本では近年、「アサイー」や「マキベリー」と言った、ポリフェノールを多く含むスーパーフルーツ(スーパーフード)が次々と人気となっています。
これらの本場は、ブラジルや、チリ、アルゼンチンなどの赤道直下。直射日光が照りつけ乾燥の激しい地域です。過酷な環境で育つ中で、その身を守るために実を色濃く(黒に近い紫色)したと言われています。
人間も紫外線から目や肌を保護するためにサングラスをかけたり、黒い服を着たりしますが、ポリフェノール特有の苦味や渋味も、虫や動物などに実を食べられないようにするため、植物自身が得た自己防衛反応の一つです。
このように、ポリフェノールは植物が自らの実(身)を守るために作られたものだと考えられています。
ポリフェノールの抗酸化作用
私達は生きるために「呼吸」をしています。
呼吸で摂り入れた酸素は、血液中のヘモグロビンによって全身の細胞に運ばれエネルギーを産生するために使われますが、一部は「活性酸素」と呼ばれる物質に変化します。
活性酸素には体内に侵入した細菌やウイルスを排除するという重要な働きがある一方、過剰に発生すると細胞を酸化させて老化を早め、病気などを引き起こす懸念があります。
鉄が酸素と結びつくと、やがて錆が生じてボロボロになることを「酸化」と呼びますが、これと同じ状態「酸化」を体内で起こしてしまうのが活性酸素です。特に女性の場合は、皮膚のしわやシミ、たるみなどの原因となるため、できるだけ活性酸素を減らしたいと思っている方も多いでしょう。
活性酸素を除去するには、抗酸化作用のある抗酸化物質の摂取が欠かせません。
抗酸化物質と言えばビタミンCやビタミンEなどが有名ですが、ポリフェノールはこれらよりも20~50倍も高い抗酸化作用を持っていると言われています。これは、ポリフェノールを構成する水酸基に活性酸素を除去する働きが備わっているからです。そのため、抗酸化作用はある特定のポリフェノールの働きではなく、全てのポリフェノールに共通した効果となっています。
世界的な赤ワインブームを呼んだ「フレンチパラドックス」
1992年、フランスの化学者レヌーは、チーズやバター、肉などの動物性脂肪を多く摂取しているフランス人が他の国に比べて心臓病による死亡率が低いのは、赤ワインを日常的に飲んでいるためという考察を発表しました。
動物性脂肪は過剰に摂取すると動脈硬化を起こし、それが原因で心疾患や脳疾患を起こしやすくなると言われています。
しかし、フランス人はこれに当てはまりません。
これを「フレンチパラドックス(フランス人の逆説・矛盾)」と呼んでいますが、このような現象が起こる理由に、フランスは赤ワインの消費量が欧州諸国の中で最も多いからではないかと考えたのです。
それまで、赤ワインに含まれるポリフェノールは、単に植物の色素や苦味などを構成するに過ぎないと考えられていましたが、レヌーの考察が発表された後から、世界の化学者によってポリフェノールの研究が盛んに行われ、ついに抗酸化作用があることがわかりました。
これによって、ポリフェノールは健康や美容によいという認識が世界中に一気に広まったとされ、赤ワインブームが沸き起こりました。
ジャパニーズパラドックスもある
日本人男性は喫煙率が他の国に比べて高いにも関わらず、心疾患が少ないと言われています。
その理由には動物性脂肪の摂取量が欧米に比べて低いことが挙げられますが、それ以外にも日本人はお茶をよく飲むことが考えられています。
日本のお茶と言えば緑茶ですが、緑茶にはポリフェノールが多く含まれているのはよく知られています。
つまり、フランス人と同様に、ポリフェノールの含有量が多い飲み物を好んで摂取している日本人も、例え喫煙率が高くてもそれが病気と直結していないことが考えられるのです。
このような現象は、ジャパニーズパラドックスと呼ばれています。
ポリフェノールの種類とその働き
ポリフェノールには数多くの種類がありますが、そのいずれにも共通するのが抗酸化作用です。
しかし、ポリフェノールは種類によって、それ以外の働きを持っています。
そこでここでは、ポリフェノールの種類とその働きについて、代表的なものをいくつかご紹介したいと思います。
アントシアニン
ブルーベリー、ビルベリー、ぶどう、カシス、ナス、赤ジソ、黒豆などに多く含まれているポリフェノールです。
アントシアニンには、視覚機能を正常に保つ働きがあると言われています。
目でモノを見る時、網膜にあるロドプシンというたんぱく質に、モノの情報が光による信号になって届けられ、その信号がロドプシンを通じて脳へと伝達されて初めてモノとして認識する仕組みとなっています。
ロドプシンは信号を受け取って送った後、一度はビタミンAへと分解された後再合成されますが、目を酷使したり加齢などによってこの再合成が間に合わなくなると、視界がぼやけたり、疲れ目などの症状が起こりやすくなります。
アントシアニンには、ロドプシンの再合成を助ける働きがあるため、疲労回復や視覚機能の改善などに役立つと言われています。
レスベラトロール
赤ワインの原料となるぶどうの皮や、サンタベリー(こけもも)、ピーナッツやアーモンドの薄皮などに多く含まれているポリフェノールです。
レスベラトロールは、サーチュイン遺伝子と呼ばれる長寿遺伝子(抗老化遺伝子)を活性化する働きを持っているとされ、アンチエイジング効果を期待して女性が好んで赤ワインを摂取した時代がありましたが、実はその後の研究によって、レスベラトロールはサーチュイン遺伝子の活性に直接作用しないことがわかっています。
しかし、ポリフェノールの一種であるレスベラトロールが、強い抗酸化作用を持っていることは間違いありません。
さらに、レスベラトロールには血管を健やかに保ち、血行を促進する作用もあるため、アンチエイジング効果は十分に期待できると考えられています。
カテキン
主に緑茶に多く含まれていて、お茶独特の渋味や苦味の元となっている成分です。
最近は、カテキンの含有量が多い緑茶が「特定保健用食品(トクホ)」として販売されているため、カテキンと言う言葉自体に馴染みを感じる人は多いと思います。なお、トクホとは消費者庁がその効果や効能を認めた商品にのみ付帯されるマークです。
カテキンが含まれるトクホ商品には、「血中のコレステロールを減らす」「脂肪の吸収を抑える」「体脂肪を減らす」などが明記されているため、その効果を得るために敢えてカテキンの含有量が多いお茶を購入する場合もあるでしょう。
また、カテキンにはこの他にも、殺菌作用や抗ウイルス作用など、様々な働きがあることがわかっています。
寿司屋に行くと食事の最後に緑茶を出されたことがないでしょうか?これは、殺菌作用の高い緑茶を飲むことで、生魚や貝による食中毒を防ぐ狙いがあると言われています。
さらに、カテキンには胃ガンの原因となるピロリ菌の増殖を抑えたり、ウイルスが体内で増えるのを防いで風邪予防に効果があると言われています。
カカオポリフェノール
チョコレートの主成分であるカカオマスには、カカオ(マス)ポリフェノールが多く含まれています。
ここ数年、日本では高カカオチョコレートが人気となっていますが、その背景にはカカオポリフェノールによる健康や美容に関する効果が知られてきたことがあるでしょう。
カカオポリフェノールには、血管の炎症を抑えて血液の流れをよくする働きがあると言われています。これにより、高血圧の改善や、冷え、むくみの解消などが期待できます。
なお、高カカオチョコレートはカカオマスが70%以上である必要があり、それ以下のものはカカオポリフェノールの含有量も少なくなってしまい、本来の効果を得ることができないだけではなく、糖質や乳成分の割合が多くなるため、健康によいからと食べ過ぎてしまうとカロリー過多に繋がってしまう恐れがあります。
クロロゲン酸
クロロゲン酸はコーヒーに多く含まれるポリフェノールのため、別名「コーヒーポリフェノール」とも呼ばれています。
コーヒーと言えばカフェインが多く含まれているイメージを持つ方が多いと思いますが、コーヒー内のクロロゲン酸の含有量はカフェインを大きく上回り、コーヒーの特徴的な色や苦味はクロロゲン酸が元となっています。
クロロゲン酸には、糖を分解して体内に吸収しやすくする酵素の働きを阻害する作用があります。これにより、糖の吸収を穏やかにし、血糖値が急上昇するのを抑える効果が期待できます。
また、生活習慣やストレスなどが原因で発症するⅡ型糖尿病の予防や改善に繋がると言われています。その理由には、今現在Ⅱ型糖尿病の治療に使われている薬と、クロロゲン酸には共通する作用があることが挙げられています。
(大豆)イソフラボン
イソフラボンは、大豆や葛などのマメ科の植物に多く含まれるポリフェノールです。
中でも大豆イソフラボンは、女性ホルモンのエストロゲンに似た働きをすることから、意識的に摂取している方も多いでしょう。
加齢によってエストロゲンの減少によって起こる更年期障害を始め、生理痛や生理不順の改善、骨粗しょう症の予防や改善に効果があると言われています。また、エストロゲンは女性らしさを作るホルモンと言われていることから、肌の調子を整えたり、健康な髪を育てるなどの働きもあります。
ケルセチン
ケルセチンは、主にたまねぎの皮に多く含まれているポリフェノールです。
以前に、たまねぎの皮を煮出した「たまねぎの皮茶」が健康によいと言われて流行りましたが、これはケルセチンの持つ効果によるものです。
ケルセチンは黄色い色素成分であり、たまねぎの苦味の元となる成分ですが、たまねぎ本体よりも皮の方にはるかに多く含まれていることから、お茶として煮出して飲むのが最適だと言われています。
なお、ケルセチンはたまねぎ以外にもりんごやブロッコリー、モロヘイヤなどにも比較的多く含まれています。
ケルセチンには、血液の流れを促進したり、血糖値を下げる作用などが期待できる他、抗炎症作用によって痛みを和らげたり、アレルギー症状を抑える効果もあると言われています。
アレルギーについてはヨーロッパでは抗ヒスタミン(アレルギーの元となる物質の働きを抑える)薬として医薬品認定を受けています。
ルチン
ルチンは、黄色い色素成分のポリフェノールで、かんきつ類やそばに多く含まれています。
中でもルチンの含有量が多いのが韃靼(だったん)そばです。
韃靼そばは、北海道や北陸地方で栽培されているそばの種類で、普通のそばよりもルチンが100倍も多く含まれており、黄色みがかって苦味があるのが特徴です。
ルチンには血管をしなやかにし、血液の流れを促す働きがあることから、血圧を下げたり、コレステロールの排出を促進する効果が期待できます。
なお、そばを注文した際そば湯がつきますが、このそば湯にも溶けだしたルチンが多く含まれているので、食事の際にはぜひ一緒にそば湯も摂るようにしましょう。
クルクミン
クルクミンはウコンに含まれるポリフェノールで、カレーなどのスパイスとして利用されているのが有名です。
クルクミンには肝臓の機能を活発にする働きがあると言われています。
お酒を飲むと二日酔いや悪酔いをしてしまうことがありますが、これはアルコールの分解によって中間代謝物質(アセトアルデヒド)が発生するためです。しかし、クルクミンの摂取によって肝機能を高めると、アセトアルデヒドの排出が促進されるので、二日酔いなどが早く治ると言われています。
市販されているウコン入りのドリンクが二日酔いに効くのは、クルクミンの働きのおかげなのです。
ポリフェノールの摂取に関する注意
大豆イソフラボンを含む大豆は・・・
納豆や豆腐、豆乳、おからなどの他、味噌や醤油、きな粉など多くの加工品があるため、知らず知らずのうちに過剰摂取になりやすいと言われています。
大豆イソフラボンを摂り過ぎると、ホルモンバランスが崩れて月経の量が多くなったり、生理不順などを起こる恐れがあるため、適切な量を摂るようにしましょう。
高濃度のカテキンを含むトクホ飲料を摂取して・・・
日本ではこれまで副作用の報告はされていませんが、フランスやスペイン、カナダでは肝機能障害を起こす懸念があることから、現在は販売が禁止されています。
日本で販売中のトクホ飲料にも一日の摂取目安が記されていますので、目安を超える量を摂取しないよう注意して下さい。
レスベラトロールが含まれているサプリメントの中には・・・
イタドリと言うタデ科の多年草植物が使われていることがありますが、日本では医薬品扱いとなっているため摂取には注意が必要です。
ポリフェノールの摂取について
上記の3つ以外であっても摂り過ぎにならないよう十分に気を付ける必要があります。
どれだけ体によいと言われている成分でも、過剰摂取は体の負担になり、思わぬ弊害を招くことがあります。適度に摂るように心がけましょう。